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みなし公務員の法律的な立場と不祥事予防のためのコンプライアンス研修

※研修講師依頼の内部決裁のための研修企画書・プロフィール等は最下部にあります

みなし公務員は公務員としての意識が低い場合があります

国家公務員や地方公務員など、明らかに公務員である場合は、公務員としてのコンプライアンス教育がされ、公務員としての自覚もありますが、公務員に準じた身分である「みなし公務員」の場合は、公務員であるという意識や自覚が乏しい場合もあります。

公務員は、公文書の取り扱い、贈賄・収賄、職権濫用などについて刑法の適用を受けます。当然、みなし公務員も同様に適用されます。そのため、公務員だけでなく、みなし公務員についても刑法違反として刑事事件となる不祥事に発展することも珍しくありません。

特に、みなし公務員であることがわかりにくい組織や中途採用が多い組織などは、みなし公務員としてのコンプライアンス教育が十分ではない可能性もあります。

公務員やみなし公務員は通常のコンプライアンスだけでなく、公務員としてのレベルの高いコンプライアンスが求められます。

消費者法務の専門家として、みなし公務員を対象としたコンプライアンス研修を実施した経験がありますが、「みなし公務員のコンプライアンス」について、特に注意しておくべき法律的なポイントをまとめました。それ以外のコンプライアンス研修の内容については、『新入社員コンプライアンス研修』『階層別コンプライアンス研修(管理職等)』を参照してください。

ちなみに、私は 、地方公務員の行政職員として22年間勤務後に退職して独立しておりますので、公務員のコンプライアンスの事情については理解しています。

みなし公務員とは

みなし公務員とは、公務員ではないが、職務の内容が公共性・公益性の高い業務であり、法令により公務員に準ずるとみなされる者です。刑法の適用について公務員と同じ扱いを受けます。つまり、刑法の罰則の適用を受けるということです。国・自治体の外郭団体や特殊法人、国立大学職員、国立病院の職員などが該当します。なお、「みなし公務員」という名称が法律等で定義づけられているわけではなく、一般的に呼ばれています。『いわゆる「みなし公務員」』という表現ですね。その他にも「準公務員」とよばれることもあります。

「 法令により公務員に準ずるとみなされる」具体例(国立循環器病研究センターの場合)

それぞれの組織に関する法令の中で、「公務員に準ずる」と定義づけられています。

例えば、平成30年5月23日に講師をさせていただいた【国立循環器病研究センター】平成30年度コンプライアンス研修「事例で学ぶコンプライアンス」では、「国立研究開発法人国立循環器病研究センター」設置について 、「高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律」第2条で事務所を大阪府に置くとしている根拠法令をお話ししました。

みなし公務員についての条文は第12条に「国立高度専門医療研究センターの役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」と規定されています。

高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律

(名称等)
第二条 この法律及び独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)の定めるところにより設立される通則法第二条第一項に規定する独立行政法人の名称は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める都府県に主たる事務所を置く。
一 国立研究開発法人国立がん研究センター 東京都
二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター 大阪府
三 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 東京都
四 国立研究開発法人国立国際医療研究センター 東京都
五 国立研究開発法人国立成育医療研究センター 東京都
六 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 愛知県

(役員及び職員の地位)
第十二条 国立高度専門医療研究センターの役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

「みなし公務員」かどうかを確認する方法

組織自体が「みなし公務員」

先にあげたように、みなし公務員となる根拠である「刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」は、それぞれの組織の設置法などに明記されています。したがって、「組織名 設置法」「組織名 法令により公務に従事する」などで検索し、その中から法律を見つけて、この条文を確認します。

特定の業務が「みなし公務員」

また、業務がみなし公務員の適用を受ける場合もあり、その業務を実施することと個別に指定された場合は、その実施機関はみなし公務員となるという特殊なパターンもあります。例えば、「モーターボート競走法」の第44条に規定される「船舶等振興業務」は国土交通大臣が指定することになっており、現在は、「日本財団」(昔CMでよく流れていた日本船舶振興会が名称変更した組織)が指定されており、第四十九条の(役員及び職員の地位)という条文で「船舶等振興業務に従事する船舶等振興機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」と規定されています。同法には「競走実施業務」も規定されており、「財団法人日本モーターボート競走会」が指定されて、同様の扱いとなっています。

刑法の中で公務員に関連する条文例

  • (公契約関係競売等妨害)第九十六条の六
  • (公文書偽造等) 第百五十五条
  • (公務員職権濫用) 第百九十三条
  • (収賄、受託収賄及び事前収賄) 第百九十七条
  • (第三者供賄)第百九十七条の二
  • (加重収賄及び事後収賄)第百九十七条の三
  • (あっせん収賄)第百九十七条の四
  • (贈賄)第百九十八条
  • (公用文書等毀棄) 第二百五十八条

簡単にまとめると

◆公文書関係

◆贈賄・収賄

◆職権濫用

守秘義務や兼業禁止は刑法ではなく、それぞれの法律や内部規定で適用されています

守秘義務は刑法ではなく、それぞれの組織の法律で規定されていることが多いです。

例えば、先ほど紹介した「 高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律 」の法律では、第11条に規定されています。

(役員及び職員の秘密保持義務)
第十一条 国立高度専門医療研究センターの役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。その職を退いた後も、同様とする。

当該施設では、兼業については法律では規定されていません。病院の医師はほかの病院に勤務していることもありますし、講師として活動することもあります。ただし、何でもOKというわけではありませんので、細かい運用は内部規定が適用されます。

ほかの組織でも同様で、各組織内の規定で、兼業や副業が認められるか判断されます。

公務員には「職務に専念する義務」などがあります

国家公務員法

(信用失墜行為の禁止)
第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。
3 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。
4 前三項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。
5 前項の規定は、第十八条の四の規定により権限の委任を受けた再就職等監視委員会が行う調査について準用する。この場合において、同項中「人事院」とあるのは「再就職等監視委員会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」と読み替えるものとする。

(職務に専念する義務)
第百一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
2 前項の規定は、地震、火災、水害その他重大な災害に際し、当該官庁が職員を本職以外の業務に従事させることを妨げない。

(私企業からの隔離)
第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
② 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
③ 営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事院は、人事院規則の定めるところにより、株式所有の関係その他の関係について報告を徴することができる。
④ 人事院は、人事院規則の定めるところにより、前項の報告に基き、企業に対する関係の全部又は一部の存続が、その職員の職務遂行上適当でないと認めるときは、その旨を当該職員に通知することができる。
⑤ 前項の通知を受けた職員は、その通知の内容について不服があるときは、その通知を受領した日の翌日から起算して三月以内に、人事院に審査請求をすることができる。
⑥ 第九十条第三項並びに第九十一条第二項及び第三項の規定は前項の審査請求のあつた場合について、第九十二条の二の規定は第四項の通知の取消しの訴えについて、それぞれ準用する。
⑦ 第五項の審査請求をしなかつた職員及び人事院が同項の審査請求について調査した結果、通知の内容が正当であると裁決された職員は、人事院規則の定めるところにより、人事院規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。

(他の事業又は事務の関与制限)
第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

地方公務員法

(信用失墜行為の禁止)
第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(秘密を守る義務)
第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を受けなければならない。
3 前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。

(職務に専念する義務)
第三十五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

(営利企業への従事等の制限)
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

みなし公務員としてのコンプライアンス研修

みなし公務員を対象としたコンプライアンス研修では、通常のコンプライアンス研修の内容に加えて、みなし公務員としてのコンプライアンスについてもお話しします。

通常のコンプライアンス研修

(追加)みなし公務員としてのコンプライアンス

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一般企業のコンプライアンス研修(特に新入社員コンプライアンス)

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消費者庁の消費者教育推進会議で「新入社員コンプライアンス研修」の取り組みを報告しました(2021/2/24)

消費者庁の消費者教育推進会議(第3期)「第4回社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会(令和3年2月24日 )」において、「明石商工会議所での新入社員コンプライアンス研修」の取り組みを報告させていただきました
※スライド20枚分のPDFファイルは、消費者庁HPから閲覧できます
https://www.caa.go.jp/policies/council/cepc/meeting_materials_4/

【研修事例紹介レポート】
【明石商工会議所】新入社員コンプライアンス研修「社会人のコンプライアンス」~企業不祥事の未然防止と若者を狙った悪質商法から身を守るために~(平成31年4月5日)

投稿者プロフィール

消費者法務コンサルタント 赤松靖生
消費者法務コンサルタント 赤松靖生
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)
◆WEB情報発信の専門家(ITコーディネーター)
ワードプレスによるホームページ制作支援・WEB情報発信支援
WEB情報発信セミナーなどWEB関係は趣味から発展した専門分野