毎年実施される明石商工会議所での2日間の新入社員研修の2日目の午前中の2時間を担当しました。受講者は約70人で、5年連続で講師をさせていただきました。

最近は、SNSでの不適切動画など、企業不祥事が相次いでおり、コンプライアンスという言葉も一般的に普及してきましたが、若者にはまだまだなじみの薄い言葉です。聞いたことがあっても、具体的に何を意味するのか分からないこともあるでしょう。

そんな新入社員に弁護士や管理職が難しいことを話しても耳に入らないかもしれません。企業にとっては、禁止事項やダメ出しを押し付ける(教育)ことになるので、コンプライアンス研修はスタートの時点で受講者のモチベーションは低いかもしれません。売り上げが上がるとかマーケティングだとか、そういう魅力的な分野ではないので、効果を出すコンプライアンス教育には工夫が必要です。

私のコンプライアンス研修は、コンプライアンスという言葉や意味を知らないということが前提でスタートします。

研修の最初に「コンプライアンスについて知っていることをメモしてください」という感じでちょっとしたワークをします。「知らない人は知らないと書いてもいいし、白紙でもいいです」と。すると知らない人が多いのですね。

研修の最後に同じ質問をしてワークをします。何か一つでも書けるようになったらOKだと思っています。みなさま、しっかり書いていますので、研修に参加し意味があったということです。

1回の研修ですべてができることにはならないです。コンプライアンスを知る「きっかけ」「意識付け」「自分ごと」になっていただければと思います。

この研修は、身近な契約の経験や自分の身の回りで起こっている悪質商法の話から始まり、企業不祥事の未然予防へとつなげていく、「消費者教育」と「不祥事予防」をコラボさせた研修になっています。

毎年、微妙に内容がブラッシュアップされているので、過去のレポートも参考にしてください。

研修内容

研修タイトル
『社会人のコンプライアンス
~企業不祥事の未然防止と若者を狙った悪質商法から身を守るために~』

配布資料・・・レジメ1ページ、資料10ページ、確認テスト2ページ、消費生活センターのリーフレット
※スライド資料は配布していません

主な内容

  1. 20歳になったら何が変わる?
    ・・・法律(民法)上の「未成年者の契約」と「20歳になったときの責任」について
  2. 消費者契約について
    ・・・トラブルの多い取引には法律の規制がかかり消費者は保護されます
  3. 特定商取引法とクーリングオフについて
    ・・・クーリングオフ期間内であれば無条件で解約できます
  4. 具体的なトラブル事例を紹介
    ・・・キャッチセールス、デート商法、マルチ商法など
  5. クレジット契約と借金について
  6. 消費者力を向上させ、自立した消費者へ
  7. 事業者として法律を守る立場に
    ・・・事業者としてのコンプライアンス
  8. 企業不祥事の未然防止
    ・・・SNS等のネット投稿・個人情報の流出
  9. まとめ

研修内容の一部を実際に使用したスライドで紹介します

さすがに話題になっていますので正解が出てきます。成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるのですね。
この成人年齢が今日の一つのキーワード「大人の責任」につながるのです。

契約とは何か?携帯電話の契約の話をもとに、契約は法律行為であることを民法第4条とともに紹介しました。

途中で簡単な確認テストを挟みながら進めます。

消費者契約法や特定商取引法についても、実際に自分たちの身の回りで起こっている消費者トラブルの事例を織り交ぜながらお話ししました。

デート商法は特定商取引法の訪問販売に該当します。以前は「職場を見に来ない?」という誘いとともに宝石を売るというパターンがあったのですが、最近は投資用マンションを売るという悪質さが増しています。つい先日、報道された実話ですね。そういうトラブルに遭った時にどうすれないいのか?

借金問題

贈収賄や横領などの原因の多くは「借金」です。しかし、従業員が借金をしているかどうかはわかりませんし、聞いても答えないと思います。人事に給与差し押さえの連絡が来て知ることもあります。借金でどうしようもなくなり、会社のお金に手を付けることになる前に何とかしたいところです。

借金といえば自己破産。自己破産といえば破滅。
実は、自己破産以外の解決方法があるということを知ってもらい、早めに専門機関に相談していただくということを、将来思い出していただけたらと思い、コンプライアンス研修では必ずお話ししています。

消費者から事業者の立場へ

単なる消費者教育であれば、新入社員研修にはどうかな?と思うかもしれませんが、今まで消費者としてトラブルに対して企業に文句を言う立場だったのが、企業人になったことで、逆に消費者から文句を言われる立場になったのです。そのときに、苦情を言われても仕方がないような対応をしてしまったのなら、問題があります。

消費者としての経験を活かして、企業の側からも、きちんと法律を守ったお客様対応をすることが重要であり、これが「コンプライアンス」というものになります。ここまで、理解することで消費者教育とコンプライアンスがつながってくるのです。

企業不祥事について考えてみよう

コンプライアンスには、お客様対応のコンプライアンスだけでなく、従業員個人のコンプライアンスというのがあり、それが企業不祥事につながっていきます。特に、SNSによる不祥事が社会問題となっています。具体的な、不祥事事例を紹介しながら、不祥事を予防するために何をすれないいのかお話ししました。事例のスライドはリアルすぎるので紹介は控えさせていただきます。

また、SNSによる不祥事だけでなく、個人情報の流出や情報セキュリティについてもお話ししました。

まとめ

この研修は、新入社員が少ない地元の中小企業からの参加です。わざわざ会社が参加費を支払って、さらに給料も出ているという立場で参加できているということは、新入社員にとって非常にありがたいことです。参加してよかったなあということを1つでもいいので会社に持ち帰っていただけたら嬉しいです。

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新入社員コンプライアンス研修の内容を紹介します(消費者教育と不祥事予防を融合)

投稿者プロフィール

消費者法務コンサルタント 赤松靖生
消費者法務コンサルタント 赤松靖生
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)
◆WEB情報発信の専門家(ITコーディネーター)
ワードプレスによるホームページ制作支援・WEB情報発信支援
WEB情報発信セミナーなどWEB関係は趣味から発展した専門分野