貸衣装の解約金条項の差し止め請求で「認諾」

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NHKのニュースを見ていたら、「貸衣装解約料で業者が認諾」というニュースが流れ、画面の右上には『貸衣装一律キャンセル料裁判で業者は「認諾」』というタイトルが書かれていました。

まさか、一般のニュースで「認諾(にんだく)」という言葉が出るとは思いませんでした。
「認諾」なんて言葉は一般の視聴者はまず知らないと思います。

しかし、一般の消費者も関係することがあるのです。

認諾とは

認諾とは訴訟の専門用語です。
裁判で訴えられると、裁判所から口頭弁論の呼び出しがあります。そこで、裁判に向けてお互いの言い分を主張し合って、最終的には判決がくだされ、白黒付くと言うものですが、この口頭弁論に出席しない場合は、相手の言い分を丸まる認めたこととみなされます。これを「認諾」と言います。すなわち、原告側の全面勝訴となります。

「認諾」とは、裁判の口頭弁論に欠席した場合に、相手側の訴えをすべて認めたことになるという専門用語です。

民事訴訟法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H08/H08HO109.html

第二百四十四条  裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る。

(請求の放棄又は認諾)
第二百六十六条  請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
2  請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。

(和解調書等の効力)
第二百六十七条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

認諾は業者だけのことではなく、一般の消費者も注意が必要

実は、裁判で訴えられるのは業者だけとは限りません。業者から消費者が訴えられるときもありますし、個人間の争いで個人から訴えられることもあります。
したがって、もし、訴えられた場合に口頭弁論に出席しないと、「全面敗訴」になってしまい、思わぬ賠償金の支払い義務が課されることもあります。
この場合、全く覚えがなかったり、不当な請求であったりしても、口頭弁論を欠席したら、敗訴の判決が出てし、控訴しなければ確定します。確定すると強制執行されますので、覆すことは難しいでしょう。
口頭弁論を欠席する場合でも陳述書を出しておけば判決が下されるわけではありませんし、もし、欠席裁判で敗訴してしまったのなら、控訴期間の2週間以内に控訴すれば戻すことはできます。
今回の裁判では、当日いきなり欠席と言うわけではなく、認諾をするという書面をきちんと提出したということでしょうね。

口頭弁論の呼び出しは裁判所からの特別送達という書留で送られます

さて、「認諾」で注意しなければならないのが、裁判所からの呼び出しを架空請求だと思い放置していて、口頭弁論に 欠席してしまい「認諾」したことになるというものです。以前に裁判所を名乗った架空請求が流行っており、無視するという対応をするのが普通でしたが、業者も考えて、本当に裁判所を使って請求をした事例もあったの で、消費者としても「認諾」はあなどれません。

別に記事を書いているので参照してください。
裁判所からの特別送達(書留郵便)を放置したら、とんでもないことになります(2014年12月3日)
http://soudanskill.com/20141203/2540.html

業者にとって「認諾」のメリットは?

なぜ認諾したのか?
普通に考えて、敗訴は確実だからですね。
しかし、単に敗訴だけではなく、裁判を続けることによって、ほかの部分も突っつかれる可能性があります。訴えられた内容以上の判決が出たら、たまったものではない、と考えて、訴えだけの部分を認めて終わらそうという考えだったのかもしれません。つまり、裁判をすると、具体的な解約金の根拠資料を用意したり、適正な解約金はいくらになるとか、負け戦に輪をかけられる可能性があるからです。

結局、訴えられた内容の「一律30%の解約金は消費者契約法に違反している」という部分だけ認めたことになります。しかし、30%という数字を変えれば、極端な話、29%にすれば使えるということになり ますね。事業者についた弁護士が賢かったのかもしれません。原告には不満の残る「認諾」だったのかもしれません。裁判をすれば適正な解約料の目安が出たかもしれなかったのですから。

この裁判って、いったい何の裁判なの?

一般の人にはなじみがないと思いますが、「消費者契約法」の「消費者団体による差止請求」になります。

「消費者契約法」というのは、消費者と事業者の契約上のトラブルを解決するための法律です。もともと、消費者は弱い立場であり、不当な契約を強いられた場合に、事業者相手に裁判をおこすことはとても負担になります。そこで、「適格消費者団体」というほぼボランティアの専門家集団の団体が、代わりに裁判を起こすことができる制度です。

この裁判の特徴は、一度判決がなされると、以後、同じ内容の裁判はできないことになっており、判例となってしまいます。したがって、判決が確定すると今後の事業運営に支障をきたすという理由から、和解に持ち込む場合も少なくありません。
もちらん、消費者側が敗訴する場合もあります。
また、最高裁まで進むこともあります。

消費者契約法の何が対象となるのか?

一番有名なのが、契約の不当条項です。
不当な契約内容だったり、高額な解約金やキャンセル料が該当します。

消費者契約法の条文でいえば、第八条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)、第九条 (消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)、第十条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)ですね。そのほかには第四条の「不当勧誘」などがあります。

消費者契約法の不当条項をめぐる消費者団体による差し止め訴訟では入学金訴訟が有名です。入学金訴訟では、入学前に辞退した場合に、入学金は大学に 入る権利なので返金はできないが、授業料は大学側には実質的な損害はないので返金可能だとするものです。これまでは、授業料も返金してもらえなかったです から、成果の出た判決となっています。

また、消費者センターでは、早期の解約での高額なキャンセル料の苦情はかなり多く、有名どころでは、結婚式場や貸し衣装となっています。

そのほか、身近な例として、携帯電話の2年縛りの中途解約金が高額であるとして争った裁判もあります。結局、大手3社とも原告の訴えは認められず、解約料が高額すぎるとはならないとされました。

差し止め訴訟は消費者契約法以外にも、特定商取引法、景品表示法、食品表示法にも拡大されています。

関連ニュース記事(引用)

【NHK】貸衣装解約料で業者が認諾 10月31日 00時28分
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20151031/3130291.html
動画あり ※NHKは削除されるのが早いです
大阪の消費者団体が、結婚式の貸衣装業者に対し、挙式までの日数に関わらず、一律にキャンセル料を請求する契約をやめるよう求めた裁判で、被告の業者は裁判で争わずに訴えを全面的に認める「認諾」という手続きをとりました。
大阪・天王寺区の貸衣装業者「VeaU」と「富久屋マネージメント」は、ウエディングドレスなどの結婚式の貸衣装の契約で、挙式の30日前までにキャンセルした場合、契約金額の30%をキャンセル料として請求していました。
これについて、大阪の消費者団体の「消費者支援機構関西」が、挙式までの日数に関わらず、一律にキャンセル料を請求するのは、消費者契約法に違反しているとして、こうした契約をやめるよう求めていました。
30日、大阪地方裁判所ではじめての口頭弁論が開かれ、2つの業者は、裁判で争わず、訴えを全面的に認めて裁判を終わらせる「認諾」という手続きを取りました。
これにより、2つの業者は、今後、問題とされた内容の契約ができなくなりました。
2つの業者は「裁判で争うことによる影響を考慮し認諾を選んだ。
契約の内容については今後検討したい」としています。
原告の「消費者支援機構関西」の榎彰徳理事長は、「訴えが全面的に認められたことで、問題となった約款は今後、使えないが、解約違約金をゼロにするのか、2割にするのか、裁判で決まっていない。
今後、どういうかたちにするのか、運動を続けていかないといけない」と話しています。

【関西テレビ】ウエディングドレス解約料高すぎる?
http://www.ktv.jp/news/date/20151030.html#0516967

人生の晴れ舞台の結婚式を彩るウェディングドレス。
数あるドレスの中から自分にとって最高のドレスを選ぶ時間は女性にとって幸せなひと時です。
しかし・・・。
「高額なキャンセル料」
そんなウエディングドレスをめぐってある裁判が開かれました。
訴えを起こしたのは消費者被害の予防や拡大防止に取り組むNPO法人「消費者支援機構関西」。
大阪市で、ウェディングドレスなどのレンタル業を営む「VeaU」と「富久屋マネージメント」に対し、「キャンセル料」の規定の使用を差し止めるよう求めたのです。
訴えによると、この2つの会社は、客が衣装を借りる契約を結んだ当日から結婚式の30日前までに解約すると、キャンセル料として一律、代金の30パーセントを徴収するとしています。
しかし、実際には式の1年以上前から契約が結ばれるものも少なくありません。
原告側によると式の5ヵ月前に35万円の契約を結び、3日後に解約したら10万5000円のキャンセル料を支払ったケースもあるということです。
そのため契約日から高額なキャンセル料が発生するのは消費者に不当な負担を強い違法だとして、契約条項の差し止めを求めました。
そして30日、2社は原告側の訴えを全て認めて受け入れることを決めたため、裁判は終結しました。

【原告の会見】
「問題があると認識しているからこそそういう結論になったと。明らかに高額すぎるキャンセル料があればどんどん正していきたい」

2社は契約日から式の30日前までの解約で発生するこれまでのキャンセル料の契約条項を破棄し、今後このような契約を消費者と結ばないことになります。
(2015年 10月 30日 19時 31分 更新)

【毎日新聞】婚礼用貸衣装訴訟:業者2社が認諾 大阪地裁
毎日新聞 2015年10月31日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/area/news/20151031ddn012040030000c.html

婚礼用貸衣装の高額な解約金は消費者契約法違反だとして、大阪市のNPO法人「消費者支援機構関西」が同市内の貸衣装業者2社に契約条項の差し止めを求めた消費者団体訴訟の第1回口頭弁論が30日、大阪地裁であった。2社は請求を全面的に認める「認諾」をし、訴訟は終結した。

2社の契約条項は、契約日から挙式30日前までの解約金を一律30%としていた。認諾したことで2社はこの条項を使用できなくなる。NPOは、認諾内容が履行されない場合に制裁金を科すよう地裁に申し立てる。

【MBS】貸衣装キャンセル料めぐる裁判で原告の主張が認められる
更新:10/31 00:12
http://www.mbs.jp/news/kansai/20151030/00000077.shtml

結婚式の貸衣装の解約金を巡る裁判が決着しました。
婚礼衣装レンタル会社の「VeaU」などは契約した日から式の30日前までキャンセル料を一律3割と定めていますが関西の消費者団体が「どれだけ前から契約しても30日前まで一律3割なのはおかしい」として契約条項の廃止を求めていました。
30日の口頭弁論で会社側が消費者団体の訴えを全て認め裁判が終わりました。
レンタル会社側は「裁判で争うことによる影響を考慮した。契約条項をどう改めるか検討したい」としています。

適格消費者団体 特定非営利活動法人 消費者支援機構関西

http://www.kc-s.or.jp/

今回の裁判の原告となったのは、関西の消費者行政関係者は愛称のケーシーズ(kc-s)と呼んでいる、消費者支援機構関西です。
HPで裁判での陳述書が閲覧できます

貸衣装会社(株)VeaU、富久屋マネージメント(株)の2社に対して、貸衣装解約条項の一部使用停止を求めた差止請求訴訟。被告2社はKC’sの訴えを「認諾」し、終了しました。
http://www.kc-s.or.jp/detail.php?n_id=10000557

2015.10.30(No.10000557)
本日(2015年10月30日)、貸衣装会社(株)VeaU、富久屋マネージメント(株)の2社に対して、貸衣装解約条項の一部使用停止を求めて、差止請求訴訟を大阪地方 裁判所に2015年9月2日提起していた裁判がありました。
当団体の訴状陳述、理事長の意見陳述の後、被告答弁書陳述で、被告両社から「原告の請求をいずれも認諾する」との答弁があり、確認し裁判は終了しました。

※「認諾」とは…原告の請求を認めること、認諾は請求を認める確定判決と同一の効力があります。本件の場合、被告らは今後、原告が訴えで使用停止を求めた契約条項を使用できなくなります。

2015年10月30日KC’s意見陳述書(http://www.kc-s.or.jp/upload/f10000557_1.pdf