平成28年に地元の明石市教育委員会からの依頼で、小学校の学校給食関係者の研修会で「学校給食における異物混入の原因と対策」についてお話させていただきました。このたび、三重県教育委員会からも同様の研修依頼がありました。三重県は主に県立学校の給食実施校(特別支援学校・定時制学校等)の調理関係者約90人が対象で、1時間45分の時間をいただきました。
前回の内容を基本として、新しい事例を追加したり、ブラッシュアップしています。
【参考】明石市教育委員会 学校給食における事故防止について~異物混入の原因と対策~(2016/12/26)【実施報告】
【内容】学校給食における事故防止について~異物混入の原因と対策
- ネット時代の食品不祥事(SNSやクレーマー)
- 事故の事前対策と事後対応(危機管理の考え方)
- 異物混入事例の検討(ワーク)
- どんなときに異物が混入するのか(HACCP的な考え方)
- 組織対応と個人対応(事故防止のためにできること)
- リスクコミュニケーション(100%の安全はないという前提)
【目標】
「組織で取り組むこと」と「個人で取り組むこと」を理解して、すぐに行動したいと感じる
1.ネット時代の食品不祥事(SNSやクレーマー)
- インターネットを通じて情報拡散し、社会問題に発展するようになった。
- 学校給食の事故も保護者を通じて、意図せず情報が拡散する可能性もある。
- 情報が独り歩きしないように、迅速な対応が求められる。
2.事故の事前対策と事後対応(危機管理の考え方)
危機管理は2つの考え方から成り立つ
「事前対策」・・・事故が起こらないようにあらかじめ対策しておく(リスクコミュニケーション)
「事後対応」・・・事故が発生したときに原因究明・被害拡大防止・被害者対応など迅速な対応ができるようにしておく(クライシスコミュニケーション)
⇒ マニュアルの作成、研修、シミュレーション訓練、多くの事例を知ること(反面教師とする)
3.異物混入事例の検討(ワーク)
- 事故事例から学ぶことは、生きた教材である。
- 一般の消費者としてみるだけでなく、プロの調理関係者として、「どう思うか?」「なぜ起こったか?」「自分のところで起こるか?」「起こったらどう対応するか?」を考える
【ワークのポイント】
- 異物の混入経路を考える(原材料・環境・作業・人)
- 組織対応が必要か、個人対応が必要か
- 異物混入のタイミングは、給食の提供前か後か
8つの事例(ニュース映像)
【事例1】小学校の給食にプラスチック片混入
【事例2】学校給食でまた異物混入
【事例3】学校給食に異物混入 市教委はそばアレルギーの子供に調査を開始
【事例4】給食に混入した異物は、危険なアレルゲンの「そば」と判明
【事例5】給食のスープに白い異物 児童3人が体調不良訴え
【事例6】給食センターで“アカダニ” 蛇口から数匹見つかる
【事例7】東京と神奈川の小中学校で「牛乳の味がおかしい」
【事例8】給食の牛乳に“異臭”新宿区で児童ら1300人訴える
牛乳の異物混入事例
- 牛乳に関しては2本のニュース動画に追加して2本のニュース記事のあわせて4つのパターンを紹介
- ①青草臭②産地のかたより③洗浄液の混入④タンクのサビの混入
異物混入の発見タイミングについて考える
- 異物混入を100%防ぐことは難しい
- 最終的に、提供する給食に異物が混入しないことが目的ではないか?
4.どんなときに異物が混入するのか(HACCP的な考え方)
- 異物混入の原因には、「原材料」「環境」「作業」「人」由来の混入経路がある。
- HACCPの考え方を使って、どこで何を注意すればいいのかを整理する。
- 「できていること」「できていないこと」「これからやれること」などを考える。
「HACCP的な考え方」
- ミスが起きそうな場所を探す
- どんなミスが起こりそうなのか考える
- ミスが起こらないような方法を考える
- その管理のために記録をする
HACCPの定義(厚生労働省HP)※説明文が以前と少し変更されていました
【参考】『HACCP(ハサップ)』とは?
Hazard Analysis and Critical Control Point
HACCP とは、 食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法です。
【引用元】https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/
5.組織対応と個人対応(事故防止のためにできること)
- 異物混入の経路を整理し、組織として対応していかなければならないことか、個人個人の心がけで対応できることかを分けて、それぞれの具体的行動を考える。
- ToDo(やるべき)リストやマニュアルの作成。予算措置。情報共有。
- 組織でも、「教育委員会」「学校」「調理担当者」と、さまざまな段階の組織がある。
- いきなりトップの組織に要望する前に、まず、自分たちの職場でできることを考えることが大切。
- トライ&エラー、試行錯誤 ⇒ 成果(成功・失敗)を情報共有
6.リスクコミュニケーション(100%の安全はないという前提)
- 事故を起こしたい人はいない。
- しかし、どれだけ対策していても事故は起こってしまう。
- 事故は起こるものと考えて、その起こる可能性をできるだけ低くするように対策する。
- 過去は変えることができない【次を考える】
- 責任感に押しつぶされない【メンタルサポート】
投稿者プロフィール
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◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)
◆WEB情報発信の専門家(ITコーディネーター)
ワードプレスによるホームページ制作支援・WEB情報発信支援
WEB情報発信セミナーなどWEB関係は趣味から発展した専門分野
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