セラピスト・サロン経営者のための法律勉強会(2017/9/22)報告

セラピストやサロンで起業する女性が増えています。

サロンを経営するには国家資格や行政への届出が不要ですので、参入障壁が低くなっています。

しかし、実際は、国家資格が必要な施術行為であったり、ホームページ・チラシに関する表現文言が厳しく規制されているなど、あまり理解されていないことがあります。

また、お客様の体に直接触れる行為をしますので、健康障害などへのリスク対応も必要です。

これらのことを全く気にせず営業されている経営者もいれば、しっかり勉強しておきたいという経営者もいます。

今回、友人のセラピストから依頼されて、女性限定で「セラピスト・サロン経営者のための法律勉強会」を開催しました。参加者の皆様は、現在サロンを経営している、また、これから経営する予定の意識の高い女性経営者ばかりで午前2時間+午後4時間の6時間の勉強会になりましたが、集中して学ばれていました。その概要をレポートします。

事業をするなら知っておくべき契約と取引の基礎知識(10-12時)

まず、事業者としての基本的な知識を知った上で専門的なことを学ぶほうが理解が深まります。

午前中は、いつも開催している2時間のセミナーを行い、法務の全体像やお客様対応の基本を確認しました。

セミナーの内容はこちらを参照してください。

セミナーの内容と目標

  1. 大切な資金を守る
  2. ビジネスに必要な法律を知る
  3. 消費者契約と事業者間契約の違いを知る
  4. みなさまの事業と関係があるか考えてみる
  5. 消費者対応における『コンプライアンス(法令遵守)とリスク管理』を知る
  6. 事業の成長発展につながる予感を感じる

こんなトラブルの経験や悩みはありませんか?

  1. お客さまからクーリングオフを要求され、消費者センターに言うぞといわれたが、受けなければならないの?
  2. お客さま都合で返品や交換を要求されたが、拒否していいの?
  3. 個人情報の取り扱いについて聞かれたが、どう答えるたらいいの?
  4. 個人レッスンのお客さまからストーカー的な行為を受けている
  5. 商品の不良品・欠陥を指摘された
  6. ホームページに名前や自宅住所を出したくない
  7. 訪問販売や電話営業に規制はあるの?
  8. 裁判するぞといわれたけど、本当に訴えられるの?
  9. 行政から注意を受けたが、どう対処したらいいの?
  10. 商品やサービスの表示やうたい文句が違反になってないか気になる
  11. 製造した商品でケガをした、提供した食品で食中毒を起こした
  12. オリジナル商品の製造を委託していた業者が類似品を販売している
    など

 

セラピスト・サロン経営者のための法律勉強会(13-17時)

メインの勉強会です。

サロンでの施術行為が、国家資格や保健所への届出が必要な接骨院等の施術所と比較した場合の「立ち位置」がどこにあるのかということを医療関係の法律で確認しました。

無資格施術で逮捕など、医療関係の違反は時々新聞報道もされており、厳しく罰せられますので、違反しないようにするために、どのような規制があるのかを知っておく必要があります。

さらに、午前中に紹介した「ビジネスに必要な法律の基本6ステップ」からサロン経営に関係する重要ポイントをピックアップして実際の経営にどう活用していくのかを具体的な事例をあげながら解説しました。

4時間あるとはいえ、複数の法律を横断的に勉強するのことになるので、ざっくりとした全体像とポイントの解説になりました。持ち帰って、ご自身の経営に当てはめると、悩みや疑問が出てくると思いますので、引き続き勉強会等で学んでいただけたらと思います。私のセミナーは何度も参加して少しづつ理解と実践を繰り返していくことがポイントです。

事故のことを意識していますか?

個人で小さく経営しているサロンでは、苦情やトラブルを経験することはあまりないと思います。しかし、いざ、トラブルが発生したときにパニックに陥らないように準備しておくことが必要です。

そこで、具体的なトラブル事例を「事故情報データバンクシステム」を使って調べる方法を実際に操作しながら確認しました。

 

「え!こんな事故が発生しているの?」という驚きの声が上がりました。

本当にありえない事故が多いのです。それがサロン業界への評価につながってしまうのです。

事故情報は主に消費者センターで相談を受けたものなどが蓄積されています。トラブルが多いと、消費者センターのトップ機関である「国民生活センター」が消費者向けに注意啓発の記者発表をし、これを受けて消費者庁や厚生労働省が規制の強化を検討するというプロセスをたどります。今現在は「美容医療」に対する規制強化が始まっています。

実はサロンも他人事ではなく、特に、国家資格などの法律の規制を受けていないがために事故が多発しています。国民生活センターでも注意啓発の記者発表をして、そのデータが今でもNHKの番組で使われるなどしており、今後、気をつけなければならない業種となります。

(事故情報の事例)

  • 妻が腰の状態が良くなかったので整体院で施術を受けたら臀部の上部を内出血し痛みが続いた。対処方法を教えてほしい。
  • 整体院をネットで検索し「改善率95%全国TOPの専門院」と表示があり、他県まで施術に行ったが施術前より調子が悪くなった。
  • 施術中、うつ伏せに寝た状態で右腕を背中側に引っぱられたところ、右肘のじん帯を損傷。
  • ひざ下のリラクゼーションマッサージを受けたらあざが多数できた。業者はあざと施術に因果関係はないという。どうしたらよいか。
  • アロマサロンでヘッドマッサージをした。その2時間後、美容院で耳の上が2センチ弱切れていると指摘された。医療費負担希望。
  • 旅行先のエステ店でオイルアロママッサージを受けたら椎間板ヘルニアになった。治療費を請求できるか。
  • 歯のセルフホワイトニングの店で、自分で歯にジェルを塗り、スタッフがLEDライトを照射。歯茎が白くなり知覚過敏の症状が発生

賠償保険に入りましょう

  • 死亡事故・欠陥製品・大規模食中毒等の大きな事故が起これば、賠償金や事故対応で数百万円から億単位の費用が必要になる場合もあります。
  • 商品やサービスだけではなく、情報の事故(個人情報・著作権違反)にも注意が必要です。
  • 保険に入っていれば、金銭の工面に奔走する必要がなくなります(個人事業主の場合は自己破産しなければならない場合もあります)

※具体的な保険を紹介しました。

医業行為と医業類似行為の違い

医業類似行為の定義は昭和35年の最高裁判決が基準となって今も解釈されています。

医業類似行為は人の健康に害を及ぼす恐れのある業務行為でなければ禁止の対象にならない(昭和35年1月27日最高裁判決)

 

広告規制について

広告規制に関係する法律等

  • 医師法・柔道整復師法・あはき法
  • 医療広告ガイドライン【準用】
  • 医療機関ホームページガイドライン【準用】
  • 消費者法(消費者対象のビジネス)
    民法、消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、個人情報保護法、健康増進法、旧薬事法、など

※法律に基づかないサロンは医療機関のガイドラインの適用対象外ですが、「準用」されるという行政独特の考え方を解説しました。

ポイント・・・法律やガイドラインを理解したうえで、自己責任でチラシやホームページを作成する

そのほか資格や許可で注意すべきこと

契約の基本(民法・消費者契約法・特定商取引法)

一般法と特別法の考え方

同じ事例でも、民法・消費者契約法・特定商取引法の3つとも適用されることがあり、必要に応じて適用する法律を使い分けます。例えば、一般法の民法では過失を証明するのが大変ですが、特別法である特定商取引法が適用されるならクーリングオフなどの強力な効果を持ちます。

民法

契約するときに気をつけなければいけない「制限行為能力者(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被保護人)」について紹介し、認知症の場合のトラブルの考え方を解説しました。

消費者契約法

契約の取り消し(誤認・困惑・過量販売)と不当条項

特に不当条項については、キャンセル料の金額設定(平均的損害額)についての考え方を解説しました。不当なキャンセル料についてのトラブルが多く、裁判にもなっています。

ポイント・・・キャンセル料の金額設定の根拠を明確にしましょう

特定商取引法

トラブルの多い取引形態として特定商取引法では①訪問販売②通信販売③電話勧誘販売④連鎖販売⑤特定継続的役務提供⑥業務提供誘引販売⑦訪問購入の7類型が規制されています。

そのなかでも、サロンは「通信販売」と「特定継続的役務提供」が大きく関係してきます。

通信販売

実はネットで予約を受け付けているサロンの多くが通信販売に該当していながら、通信販売に必要案表示をしていない違反事例が多いのです。

ポイント・・・消費者対象にネットで申し込みを受け付けていた場合(事業者間取引は対象外)、商品だけでなく、サロンや講座などのサービスも、特定商取引法の通信販売の規制を受けます。個人事業主であれば本名や自宅の住所、電話番号は義務表示となります。
特定継続的役務提供

「特定継続的役務」とは、国民の日常生活に係る取引において有償で継続的に提供される役務であつて、次の各号のいずれにも該当するものとして、政令で定めるものをいう。
一 役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの
二 役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの

(特定商取引法第41条より抜粋)

政令で6つのサービスが指定されています。
①いわゆるエステティッサロン②いわゆる語学教室③いわゆる家庭教師④いわゆる学習塾⑤いわゆるパソコン教室⑥いわゆる結婚相手紹介サービス

 

いわゆる「エステテッィクサロン」⇒人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと

ポイント・・・いわゆるエステティックサロンに該当する場合で契約期間と金額が「1ヶ月以上かつ5万円超え」になる場合は契約書面の交付が義務付けられます。交付していないと、サービス提供後にクーリングオフ(無条件解約)されます。要件に該当するかサロンの提供メニューを確認することが必要です。例えば、フェイシャルケアがエステ目的かリラクゼーション目的か?など。

 

【参考】平成29年12月1日から「いわゆる美容医療」が特定継続的役務提供の対象サービスに追加されます。

「いわゆる美容医療」⇒人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと。

 

ネットビジネス(ホームページ)

先に紹介した通信販売に該当する場合は特定商取引法に基づく表示が必要です。

そして、個人事業主、特に自宅サロンの女性の住所表記の悩みが非常に多いのです。中には、「子供がいるなら住所を出さないほうがいいよ」と間違ったことをおすすめしている自宅サロンのブログもあります。通信販売に該当するかどうかを確認しましょう。

「ホームページに住所を出したくない」という個人事業主の悩み
https://harima-coaching.or.jp/835.html

参加者のホームページをチェックしました

通信販売に該当するか、特定商取引法に基づく表示、利用目的の通知(個人情報保護法)など、個別相談で行っている表示内容の確認と修正アドバイスを勉強会の中で具体的に行いました。

個人情報の取り扱い

これまでは所有している個人データが5000人以下の場合、法律の適用除外でしたが、平成29年5月30日に法律が改正され、除外規定がなくなり、1人でも個人データを所有していた場合は個人事業主・法人を問わず個人情報保護法の適用対象となります。

個人情報保護法での事業者の義務

  • データの収集時・・・利用目的の特定・制限・通知、適正取得など
  • データの保管時・・・安全管理措置、従業員・委託先の監督、第三者提供の制限、開示・訂正・利用停止など
  • 事業者の連絡先窓口の公表

個人情報の流出への対応

  • 個人情報流出の賠償額の相場は500円?
  • 裁判をすれば高額賠償?

サロンで扱う個人情報

サロンでは身体に関する情報を受付票などに記載すると思いますが、他人には知られたくない体のサイズや肌の状態などのセンシティブな情報が含まれています。これらの情報が流出した場合は、単に住所等の流出にくらべて比較にならないダメージをお客様が受けます。TBCと似ていますね。

したがって、より厳しい個人情報の管理が求められます。

書類であれば、ファイリングして鍵のかかる書庫等に保管ということでしょう。
もし、パソコンにデータ等で保管する場合はパスワードをつけたファイルにすることが必要ですね。

個人情報を取得保管しないという方法もありますが、サロンの場合はリピータを増やすことが経営の安定化のポイントです。

上手に活用しましょう。

事業者としてホームページで具体的に表示すべきこと

義務表示
  • 利用目的の通知(18条)
  • 問い合わせ窓口・事業者名・保有個人データ利用目的や種類(24条)
義務表示以外の表示(表示したほうがいい)
  • 全体的な基本方針・・・原則(法令遵守の宣言)
  • IPアドレス・クッキー・・・一般的な説明
  • アクセス解析サービスによる情報収集
  • アフィリエイト・アドセンスによる広告配信・・・各プライバシーポリシーへのリンク

表示のルール(景品表示法)

不当表示

  • 優良誤認とは・・・商品・サービスの品質、規格などの内容についての不当表示
    (例)サロンでのサービス内容が広告していたものではなかった。効果があると広告されていたのに効果がなかった。
  • 有利誤認とは・・・商品・サービスの価格などの取引条件についての不当表示
    (例)今だけ30%オフ表示が、いつまでも30%オフ表示のままだった
  • そのほかにも、二重価格・おとり広告・比較広告・打ち消し広告・No.1表示

優良誤認表示に対する不実証広告規制とは

その表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料を提出してください(15日以内)

※これがサロンの広告表示でもっとも気をつけるべきことです。

【ポイント】景品表示法の違反対策と差別化

  • 効果・効能に対する根拠(エビデンス)
  • 差別化要素に対する根拠(データ)
  • 二重価格への対応(実態と期間)

まとめ・参加者の感想

サロンで起業する女性は家族を持っていることが多いです。夫の立場、子どもの立場、社会的な立場を考えた場合に、法律をしっかり守って経営したいと認識します。

実際に法律を守れていないサロン経営者がいるのは、今回のような話を知らないのです。また、学ぶ機会もありません。創業塾でも消費者法務をやっているところは私が講師をするところぐらいでしょう。サロンの学校でも法律を学ぶことはあまりないようです。

  • いろんな法律を一度に学ぶ機会をもらえてよかったです。
  • お客様の立場になる目線を培いたいです。
  • アロマスクールで学んだ簡単な知識しかないので、より深く知っておきたいと思い参加しました。
  • 難しそうな内容なので理解できるか少々不安でしたが、わかりやすい説明で理解しやすく楽しく受講させていただきました。
  • 今後、サロン経営を具体的に進めていく中で、疑問点や悩みも多く出てくると思いますが、また勉強していきたいと思います。
  • 「人としてどうなのか」という視点を持って、何よりお客様との信頼関係・心を大切にしたいと改めて感じました。
  • ホームページやブログなどを宣伝のために運営していますが、最近コンプライアンスが厳しくなってきていると聞き、効果や作用など言えないことがどんどん増えていく中、何をどう伝えればいいのか悩んでいました。
  • ホームページについて考え直す時期がきたなと実感しました。
  • チラシ・講座・メニューについても考え直さないといけないと思いました。
  • 起業するにあたり契約や取引についての基礎知識をきっちり学びたかった。現在アロマセラピーのサロンをオープンする準備をしていますが、今までやってきた業種とは全く違う初めての分野なので法律的なことがわからないため勉強したいと思いました。
  • 特定商取引法・景品表示法等について名前は知っていましたが、法律の内容や個々の問題点や注意点が少しは分かったのが良かった。
  • これからの開業に向けてプロフィール作成・フライヤー作成・ホームページ作成等の参考にさせていただきます。

セミナー・講座・勉強会について

定期開催セミナー(1-2ヵ月ごと)

  • 事業をするなら知っておくべき契約と取引の基礎知識 ⇒ こちら
  • WEB情報発信セミナー「ホームページをつくりたい・リニューアルしたい・充実させたい事業者のためのセミナー」 ⇒ こちら

講師依頼

  • 今回のようなサロン経営に特化した専門講座などに参加したい場合は個別に開催要望の連絡をしてください。ある程度の希望者が集まれば日程調整等をします。
  • みなさまの友人や勉強会、所属団体などから講師依頼をしていただければ、承ります。4人ぐらいからの少人数でもかまいませんので、ご相談ください。

【最後に補足】法律の知識のないコンサルタントに注意!

接骨院等はチラシ広告については規制があり、症状などを表示することができません。当然、ビフォアアフタの写真も掲載できません。

しかし、法律をよく知らないコンサルタントは、症状やビフォアアフタのチラシを作ることをおすすめして見本を作ったりしています。

リラクゼーションサロンやアロマサロンなどの法律に基づかない医業類似行為の場合はチラシはOKですが、法律に基づく医業類似行為である接骨院の新聞折込チラシの多くが柔道整復師法違反です。保健所に通報されたら指導が入ります。実際は、あまりにも違反が多くて処理しきれておらず、放置状態です。

一方、ホームページは医療広告ガイドラインでは広告とはみなされません。したがって、ホームページでの症状やビフォアアフタの表示はOKです(これがトラブルの要因であり、規制が強化されつつあります)。

しかし、症状やビフォアアフタなどが不当表示に該当する表現の場合は、景品表示法で禁止されています。景品表示法は整骨院やサロンを問わず対象となり、また、チラシやホームページを問わず規制されています。また、効果効能に関して、(旧)薬事法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)にも関係してきます。

アドバイスを受けているコンサルタントが景品表示法や(旧)薬事法などの法律を知っているのか確認してください。

表示違反は無過失責任です。誤った表示をしているという事実だけで違反認定されます。

ほかの事業者もやっているし、誰も法律を守っていないから、大丈夫だというアドバイスを受けるかもしれません。判断するのは経営者自身です。

もし、この記事をここまで読んでいただいているのであれば、コンプライアンス(法令遵守)経営を目指していると信じています。

ぜひ、私とつながってください。

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【参考】勉強会のチラシ

 

セラピスト・サロン経営者のための勉強会 ⇒ PDFファイルでダウンロード

契約基礎知識セミナー ⇒ PDFファイルでダウンロード