学校給食などの給食施設における事故防止について「異物混入の原因と対策」研修をさせていただいているのですが、さまざまな縁があり、今回は和歌山県教育委員会から依頼をいただきました。

対象は和歌山県全域の小学校から中学校、給食センターなどの調理員等の関係者約400人の参加となりました。和歌山県にとっても1日かけて開催する大きな研修で、私は朝一番90分間の登壇となりました。

大人数なので、会場も南海和歌山市駅そのばの「和歌山市民会館小ホール」で、舞台があり、大画面のスクリーンがある大きな会場でした。それでも、いつものように、事例検討では、舞台から降りて、参加者に話を聞きながら回りました。

今回の研修内容は、6月の同様の研修の事例を再構成してブラッシュアップしました。

これまでの給食関係の研修レポートは最下段にまとめています。

今回の研修の内容をレポートしますが、これまでと共通する部分は省略したりしていますので、過去のレポートも参考にしてください。

学校給食における事故防止について~異物混入の原因と対策

内容

  1. ネット時代の食品不祥事(SNSやクレーマー)
  2. 事故の事前対策と事後対応(危機管理の考え方)
  3. 異物混入事例の検討(ワーク)
  4. どんなときに異物が混入するのか(HACCP的な考え方)
  5. 組織対応と個人対応(事故防止のためにできること)
  6. リスクコミュニケーション(100%の安全はないという前提)

目標

「組織で取り組むこと」と「個人で取り組むこと」を理解して、すぐに行動したいと感じる

1.ネット時代の食品不祥事(SNSやクレーマー)

  • 消費者が体験した異物混入事例は、SNSなどを通じて情報拡散し、社会問題に発展するようになった。
  • 学校給食の事故も保護者を通じて、意図せず情報が拡散する可能性もある。
  • 事故発生時には、情報が独り歩きしないように、後手後手の対応にならないように、迅速な対応が求められる。

ワーク

異物混入事例の経験をシェア

⇒非常に多い(お店に申し出るとは限らない)
※私が経験した事例を3つ紹介

2.事故の事前対策と事後対応(危機管理の考え方)

危機管理は2つの考え方から成り立つ

「事前対策」・・・事故が起こらないようにあらかじめ対策しておく(リスクコミュニケーション)
「事後対応」・・・事故が発生したときに原因究明・被害拡大防止・被害者対応など迅速な対応を行う(クライシスコミュニケーション)

⇒ マニュアルの作成、研修、シミュレーション訓練、多くの事例を知ること(反面教師とする)

3.異物混入事例の検討(ワーク)

  • 事故事例から学ぶことは、生きた教材である。
  • 一般の消費者としてみるだけでなく、プロの調理関係者として、「どう思うか?」「なぜ起こったか?」「自分のところで起こるか?」「起こったらどう対応するか?」を考える

【ワークのポイント】

  • 異物の混入経路を考える(原材料・環境・作業・人)
  • 組織対応が必要か、個人対応が必要か
  • 異物混入のタイミングは、給食の提供前か後か

9つの事例(ニュース動画・新聞報道など)

  • 【事例1】小学校の給食にプラスチック片混入
  • 【事例2】学校給食でまた異物混入
  • 【事例3】小学校の給食に“たばこ”混入
  • 【事例4】給食のご飯に金属ねじ混入
  • 【事例5】保育園の給食にガラス片 園児の口に・・・調理中混入か
  • 【事例6】給食に異物混入 ゴム片
  • 【事例7】給食に金属ネジ混入
  • 【事例8】盛り付けていた給食の中から金属片
  • 【事例9】給食センターで“アカダニ” 蛇口から数匹見つかる
  • 【事例10】学校給食に異物混入 市教委はそばアレルギーの子供に調査を開始
  • 【事例11】小学校の給食で17人がアレルギー症状 横浜
  • 【事例12】市立小の3人が給食でアレルギー コロッケ誤発注
  • 【事例13】アレルギーで女児死亡 担任が確認せずチーズ入り給食渡す
  • 【事例14】東京と神奈川の小中学校で「牛乳の味がおかしい」
  • 【事例15】給食の牛乳に“異臭”新宿区で児童ら1300人訴える
  • 【事例16】学校給食牛乳に洗浄液混入
  • 【事例17】給食牛乳に黒い粒

牛乳の異物混入事例 ※知っておくことがリスク対応の一つ

①品質特性
②異物混入

アレルギー事故の問題点 ※すべての関係者にさまざまな原因(ミス)がある

①製造時の原材料の誤った混入
・受注者側(納品業者・製造業者)のミス
・発注者側(学校)のミス
・学校での調理(原材料投入)のミス
②製品への異物としての混入
③提供時(学校・担任)の確認ミス

異物混入の発見タイミングについて考える

  • 給食の提供前に「異物混入」を発見できるかどうか?
  • 紹介した事例の中でも、発見できた事例と発見できなかった事例がある。
  • 施設側の責任で異物が混入したとしても、給食の提供前に発見することができたら、危機を回避することができる。

4.どんなときに異物が混入するのか(HACCP的な考え方)

  • 異物混入の原因には、「原材料」「環境」「作業」「人」由来の混入経路がある。
  • HACCPの考え方を使って、どこで何を注意すればいいのかを整理する。
  • 「できていること」「できていないこと」「これからやれること」などを考える。

「HACCP的な考え方」

  • ミスが起きそうな場所を探す
  • どんなミスが起こりそうなのか考える
  • ミスが起こらないような方法を考える
  • その管理のために記録をする

HACCPの定義(厚生労働省HP)

【参考】『HACCP(ハサップ)』とは?
Hazard Analysis and Critical Control Point

HACCP とは、 食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/

5.組織対応と個人対応(事故防止のためにできること)

  • 異物混入の経路を整理し、組織として対応していかなければならないことか、個人個人の心がけで対応できることかを分けて、それぞれの具体的行動を考える。
  • ToDo(やるべき)リストやマニュアルの作成。予算措置。情報共有。
  • 組織でも、「教育委員会」「学校」「調理担当者」と、さまざまな段階の組織がある。
  • いきなりトップの組織に要望する前に、まず、自分たちの職場でできることを考えることが大切。
  • トライ&エラー、試行錯誤 ⇒ 成果(成功・失敗)を情報共有

6.リスクコミュニケーション(100%の安全はないという前提)

  • 事故を起こしたい人はいない。
  • しかし、どれだけ対策していても事故は起こってしまう。
  • 事故は起こるものと考えて、その起こる可能性をできるだけ低くするように対策する。
  • 過去は変えることができない【次を考える】
  • 責任感に押しつぶされない【メンタルサポート】

公益財団法人和歌山県学校給食会  活動報告

令和元年07月30日 「令和元年度 学校給食管理指導者・栄養教諭等研修会及び学校給食衛生管理研修会 」

https://www.waka-gk.jp/report_past.html

「異物混入の原因と対策」について、学校給食での調理関係者対象の研修会、給食施設・食品メーカー等での研修をご希望の場合はお問い合わせフォームまたは電話等によりご連絡ください。

過去の研修レポート

投稿者プロフィール

消費者法務コンサルタント 赤松靖生
消費者法務コンサルタント 赤松靖生
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)
◆WEB情報発信の専門家(ITコーディネーター)
ワードプレスによるホームページ制作支援・WEB情報発信支援
WEB情報発信セミナーなどWEB関係は趣味から発展した専門分野