• 主に学校給食を対象に研修をしているのですが、以前に給食施設の協議会で研修をしたことがあり、その縁で、兵庫県立病院の管理栄養士・調理員を対象に研修をすることになりました。
  • コロナ禍のおり、集合研修ではなく、各病院をオンラインで結んだ研修会となり、私は西宮病院から参加することになりました。使用するシステムはマイクロソフトのチームズ(Teams)です。ほかの病院のホストがスムーズに進行していただき、私のパートも動画を含め問題なく講演できました。
  • 今回の研修は、最初に私が70分担当し、3病院から取組の報告と報告に対する私の講評や質問回答などの合計2時間となっています。
  • もともと私のこの研修は90-120分で構成されているので、何とか工夫しながら70分に収めました。オンラインなのでワーク等ができなかったので、その時間は短縮できましたが、リアルな研修ではワークを入れながら進めており、受講者の感想でもワークをしたかったというのもありました。
  • ちなみに、今回から、スライド資料は落ち着いたデザインに作り直しています。
  • これまでの給食関係の研修レポートは最下段にまとめています。
  • 今回の研修の内容をレポートしますが、これまでと共通する部分は省略したりしていますので、過去のレポートも参考にしてください。
  • 約30の事例を紹介しましたが、開催するたびに事故事例の紹介が増えているような気がします。

当日の病院の給食をいただきました(病院給食を初めて食べたのですがクオリティが高くて驚き)

給食施設における事故防止について~異物混入の原因と対策

内容

  1. ネット時代の食品不祥事(SNSやクレーマー)
  2. 事故の事前対策と事後対応(危機管理の考え方)
  3. 異物混入事例の検討(ワーク)
  4. どんなときに異物が混入するのか(HACCP的な考え方)
  5. 組織対応と個人対応(事故防止のためにできること)
  6. リスクコミュニケーション(100%の安全はないという前提)

目標

「組織で取り組むこと」と「個人で取り組むこと」を理解して、すぐに行動したいと感じる

1.ネット時代の食品不祥事(SNSやクレーマー)

本来であればワークをするのですが、時間の関係とオンライン研修でもあり、項目紹介にしました。

  • 異物混入などの食品事故は、これまでは小さい範囲で収まっていた。
  • インターネットが普及するにつれて、誰もが瞬時に情報発信することが可能になった。
  • SNSを通じて拡散される食品不祥事には、「告発系」と「悪ふざけ系」がある。
  • 情報の信憑性を問わず、情報拡散し、社会問題に発展することもある。
  • 社会問題にまで発展すれば、大きな不祥事となり、社会的・経済的な制裁を受けるようになった。
  • 給食施設における事故でも、不正確な情報が拡散するリスクがある。

2.事故の事前対策と事後対応(危機管理の考え方)

危機管理は2つの考え方から成り立つ

「事前対策」・・・事故が起こらないように対策しておく。事故が発生したときに備えて何をするか考えておく。(リスクコミュニケーション)
「事後対応」・・・事故が発生したときに原因究明・被害拡大防止・被害者対応など迅速な対応を行う(クライシスコミュニケーション)

⇒ マニュアルの作成、シミュレーション訓練、研修、多くの事例を知ること(反面教師とする)

3.異物混入事例の検討(ワーク)

  • 事故事例から学ぶことは、生きた教材である。
  • 日常から、新聞・テレビなどから情報を入手する。
  • 一般の消費者としてみるだけでなく、プロの調理関係者として、「どう思うか?」「なぜ起こったか?」「自分のところで起こるか?」「起こったらどう対応するか?」など、事故を起こした当事者だったら?という視点を持つ。
  • オンライン研修のため、ワークは省略し事例紹介だけとしました

【3つのポイント】

1.異物の混入経路(由来)
① 原材料…購入したもの・保管中のもの
② 環境…建物・調理機器・設備
③ 作業…調理作業中・調理器具由来
④ 人…髪の毛など個人由来・事件性
2.組織対応と個人対応
・ 組織として対応していかなければならないこと
・ 個人個人の心がけで対応できること
3.異物混入の発見タイミング
・ 給食の提供前(食べる前)だったのか、提供後(食べた後)だったのか

事例(ニュース動画・新聞報道など)

「異物混入、アレルギー、牛乳」の3つの分野に分けて事例紹介

1.異物混入
・原材料での混入
・環境からの混入
・調理作業中の混入
・人からの混入

2.アレルギー
アレルギー事故の問題点(原因)
①製造時の原材料の誤った混入
・受注者側(納品業者・製造業者)のミス
・発注者側(給食施設)のミス
・給食施設での調理(原材料投入)のミス
②製品への異物としての混入
③提供時(施設・担当者)の確認ミス

3.牛乳
牛乳の問題点(原因)
①品質特性
②製造ライン
③異物混入

1.異物混入・原材料での混入

  • 保育園の給食、パンの中からビニール片 愛知・豊川市(中京テレビ 2020/1/23)
  • 市立保育園の給食にガラス片混入、職員が発見 名古屋(朝日新聞 2018/2/23)
  • 保育園の給食に“ネジ” けが人なし 愛知(日テレNEWS24 2020/1/23)
  • 給食のご飯に金属ねじ混入(佐賀新聞ニュース 2018/6/28)
  • 保育園の給食 “賞味期限切れ”の福神漬け(日テレNEWS24 2017/4/17)
  • 給食に小さなフグが混入 松山の中学校(産経新聞 2015/5/29)
  • 【参考】スーパーの小アジのパックへの「フグ」の混入で自主回収(山梨・2021/8/25)

1.異物混入・環境からの混入

  • 小学校の給食にプラスチック片混入(奈良テレビ放送 2015/12/09)
  • 盛り付けていた給食の中から金属片(伊勢新聞 2018/5/9)
  • 給食センターで“アカダニ” 蛇口から数匹見つかる(ANN 2016/05/12)

1.異物混入・調理作業中の混入

  • 保育園の給食にガラス片 園児の口に・・・調理中混入か(ANN 2019/6/19)
  • 給食にガラス片混入 伊勢の小学校 けが人なし 三重(伊勢新聞 2020/1/23)
  • 県立学校の給食に異物混入(富山テレビ放送 2020/2/20)
  • 給食に異物混入 ゴム片(伊勢新聞 2018/4/17)
  • 保育園の給食の中に1センチのくぎ 女児が口に入れ気付く けがはなし 沖縄(沖縄タイムス 2020/2/14)
  • 給食に異物混入か 調理後に刃先の欠損を確認 名護市(沖縄タイムス 2018/10/12)
  • 保育所の給食に包丁の破片混入(NHK徳島NEWS WEB 2020/2/26)
  • 給食に金属ネジ混入 松阪の特別支援学校、被害なし 三重(伊勢新聞 2018/4/15)
  • 給食おでんから金属片 水戸(茨城新聞 2021/10/13)

1.異物混入・人からの混入

  • 給食のスープに白い異物 児童3人が体調不良訴え (ANN 2016/10/04 )
  • 小学校の給食に“たばこ”混入 保健所が経緯調査(テレ朝news 2015/5/19)
  • 生駒市の給食にまた異物 何者かが混入させた可能性 生駒署に被害届(産経新聞 2015/12/15)

2.アレルギー ※すべての関係者にさまざまな原因(ミス)がある

  • 学校給食でアレルギー 業者がレシピ取り違え 横浜(神奈川新聞 2016/8/30)
  • 那珂川市立小の3人が給食でアレルギー コロッケ誤発注(西日本新聞 2019/1/12)
  • 乳製品アレルギーの男児にミルクココア蒸しパン 海老名市 (神奈川新聞2019/06/11 )
  • 給食の「ふしめん汁」に「そば」が混入(2010/11/19)
  • アレルギーで女児死亡 担任が確認せずチーズ入り給食渡す(TOKYO MX 2013/01/08 )

3.牛乳 ※知っておくことがリスク対応の一つ

  • 東京と神奈川の小中学校で「牛乳の味がおかしい」 (ANN 2014/04/23 )
  • 給食の牛乳に“異臭”新宿区で児童ら1300人訴える(ANN 2017/09/27 )
  • 学校給食牛乳に洗浄液混入 茨城4市町の計7校 (茨城新聞 2018/4/20)
  • 給食牛乳に黒い粒(読売新聞 2018/2/14)
  • 給食の牛乳に金属部品混入 紙製容器の中でカタカタと音 富山(毎日新聞2021/9/15)

異物混入の発見タイミングについて考える

  • 給食の提供前に「異物混入」を発見できるかどうか?
  • 紹介した事例の中でも、発見できた事例と発見できなかった事例がある。
  • 施設側の責任で異物が混入したとしても、給食の提供前に発見することができたら、危機を回避することができるといえるのではないでしょうか。

4.どんなときに異物が混入するのか(HACCP的な考え方)

  • 異物混入の原因には、「原材料」「環境」「作業」「人」由来の混入経路がある。
  • HACCPの考え方を使って、どこで何を注意すればいいのかを整理する。
  • 「できていること」「できていないこと」「これからやれること」などを考える。

「HACCP的な考え方」

  • ミスが起きそうな場所を探す
  • どんなミスが起こりそうなのか考える
  • ミスが起こらないような方法を考える
  • その管理のために記録をする

HACCPの定義(厚生労働省HP)

【参考】『HACCP(ハサップ)』とは?
Hazard Analysis and Critical Control Point

HACCP とは、 食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/

5.組織対応と個人対応(事故防止のためにできること)

  • 異物混入の経路を整理し、組織として対応していかなければならないことか、個人個人の心がけで対応できることかを分けて、それぞれの具体的行動を考える。
  • ToDo(やるべき)リストやマニュアルの作成。予算措置。情報共有。
  • まず、自分たちの職場でできることを考えることが大切。
  • トライ&エラー、試行錯誤 ⇒ 成果(成功・失敗)を情報共有

6.リスクコミュニケーション(100%の安全はないという前提)

  • 事故を起こしたい人はいない。
  • しかし、どれだけ対策していても事故は起こってしまう。
  • 事故は起こるものと考えて、その起こる可能性をできるだけ低くするように対策する。
  • 過去は変えることができない(次にどうすればいいのかを考える)
  • 責任感に押しつぶされない(メンタルサポートも重要)

アンケート(感想)

  • 異物混入などの事故を防ぐのはもちろんですが、その後どう対処するか…という事が印象に残りました。最後まで責任をもって仕事に取り組みたいと思います
  • 異物混入対応で「事故は起こるものと考えて、起こる確率をできるだけ低くするよう対策する」この言葉が印象に残りました。安心安全に提供できるよう心がけたいです。
  • 自分達の仕事は患者様に届く最重要な最後のチェック部署だと改めて感じました。
  • 実際にあった事例を知ることで、対策や対応を事前に準備できると思いました。
  • 業者から納品されたものが規格書通りでないことが原因で事故が起こるというのが印象的でした。当たり前のことを当たり前に行うのに加えて、もしかして?など疑うことも必要であり、個人の意識により防げる事故もあると感じました。
  • 様々な異物混入事例から、思いもよらないところで事故は起こるものと実感し、事前に対策だけでなく、あらゆる事態への対応策を練っておくことは非常に重要であると思った。
  • 事例はどれも非常に興味深かったです。事故や事件はゼロにならなくても、できるだけ減らしていくよう日々の業務をもう一度見直していきたいと思います。
  • 給食に異物混入があったニュースは意識して見るようにしていたので、これからも自分ごととして考える機会にしようと思いました。

研修内容・事故事例の紹介(食品事故防止チャンネル)

「異物混入の原因と対策」について、学校給食での調理関係者対象の研修会、給食施設・食品メーカー等での研修をご希望の場合はお問い合わせフォームまたは電話等によりご連絡ください。

  • 食品事故防止のための専門サイトでも情報発信しています

過去の研修レポート

投稿者プロフィール

消費者法務コンサルタント 赤松靖生
消費者法務コンサルタント 赤松靖生
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)
◆WEB情報発信の専門家(ITコーディネーター)
ワードプレスによるホームページ制作支援・WEB情報発信支援
WEB情報発信セミナーなどWEB関係は趣味から発展した専門分野